20年前、1990年に作られた記録映画「老人と海」が、今年(2010年)やっと全国で公開されています。
台湾に程近い沖縄県の与那国島が舞台で、20年前のきれいな海や島のお祭りなどがたくさん映されています。おじいちゃん漁師さんが主人公で、昔ながらの小さな船で、苦労してカジキを釣り上げる様子をすばらしいカメラワークで追っています。
島の人たちが助け合って、支えあって、みんなで生きている様子や、自分を信じて一生懸命がんばるおじいちゃんの漁を見ていると、なぜ今になってこの映画が公開されたのかわかる気がしました。
それは映画に自然と映し出されていたことで、そういう状況をわざわざ伝えようと仕込んで撮ったのではないところがまたこの映画のすばらしいところだなあと思います。
ドキュメントですが、ナレーションもないし、おじいちゃんとおばあちゃんの島言葉などほとんど聞き取れないのですが、字幕もすごく少ないです。音楽もほとんど挿入されていません。
それでも伝わってくる、胸を打たれる状況が映されていました。
何だか今自分の周りにないものが多く映しだされていて、ほんと感動して、ものすごく泣けました(ひとりで昼間の映画館で大号泣。。)。
ラストのシーンでおじいちゃんがカジキを釣り上げるシーンはこれからもずっと思い出すと思います。
公式サイトの撮影秘話で書かれていたのですが、このカジキを釣り上げるシーンを撮るのに、1年以上かかったそうです。
それはタイミングを逃したのではなく、おじいちゃんの長い不漁のためだったということで、おじいちゃんも大変だったし、それを毎日撮影をしながら待つ、撮影されていた方々はどんなに大変だっただろうと思います。
カジキを釣り上げたシーンは真正面からも船の後ろからも撮影されていて、迫力もすごいし、おじいちゃんの声や魚が上げる水しぶきの音なども鮮明に入っています。こんな一瞬をこんなに撮れるものなんだなぁと、そういう意味でも感激しました。
そして、このカジキを釣って次の年におじいちゃんはカジキに海に引き込まれて亡くなってしまうという事実があり、本当に漁は命がけだったのなぁと実感させられます。釣るシーンを見たら、確かに命がけ!というのがわかるのですが、その通り本当に海で亡くなってしまいました。
それくらいカジキを釣るというのは魅力のあることだったのだろうし、昔ながらの漁をひとりで続けていたことの意地というか誇りもあって、高齢でも漁を続けておられたんだろうなぁと思います。
あまり上映される映画館は多くないですが、おじいちゃんの頑張りと、周りの人の温かさを観て感じていただきたいなぁと思った映画でした。
公式サイトに詳しい映画の解説があります→映画『老人と海』公式サイト